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仏在住ライターのパリな日常

パリの朝市の記事一覧

春のマルシェ散策-後編

前回に引き続き、パリ郊外の街ル・ヴェジネのマルシェを、一緒に歩いてゆきましょう。

このスタンドはりんごの専門店です。6、7種類のりんごと、梨が3種類ほど、木のケースに入れたままざっくばらんに陳列されています。りんご畑の広がる丘陵地から、そのままここに届いたという感じ。
普通マルシェでは、お客さんは商品に手を触れず、店の人に選んでもらうものですが、このスタンドは自由に袋詰めをしてレジへもっていくスタイルのようですね。

パリに住み始めた頃、あちこちのマルシェでこんな専門のスタンドを見つけては、「食の国・フランス」を実感したものです。サラダ菜だけを扱う専門スタンドや、じゃがいもだけの専門スタンドがあるなんて、ちょっと想像できないですよね。
想像していただくために説明すると、じゃがいもの専門スタンドに並ぶじゃがいもの種類は、10やそこらではありません。AOCという産地呼称のついたブランドじゃがいもから始まって、ピューレ用、フライドポテト用、ソテー用、はたまた紫色のものなど、「じゃがいもってこんなに種類があったの?!」と、感心するやら驚くやらです。
りんごも、料理専用のものや、コンポートに最適なもの、ジューシーなもの、カリリとした食感のものなど、やはり種類が豊富です。
ちなみに、料理にはCanada、コンポートには boskoopがもっとも向いているといわれています。両方とも、火にかけるとすぐに崩れてくるので、あっというまにピューレ状になり、つぶす手間がかかりません。生で食べるとおいしくないのでご注意を。

りんごスタンドのお隣には、チーズがずらりと並んでいます。おなじみのカマンベールを先頭に、ざっと50種類は下らないでしょう。
ご存知の通り、フランス各地で生産されているチーズの数は、400近くにのぼると言われます。これも前回のソーセージ同様、その魅力にはまり込んでしまう食品です。今日は、カマンベールとシェーヴルをひとつずつ購入しました。各4,6ユーロです。
シェーヴルは非常に種類が多いのですが、白くてフレッシュなものはほど淡白で、かたく乾燥したものほど香も味も強くなる傾向があります。今回は、灰をまぶしたタイプを選びました。

包み紙がまた、とってもかわいらしい!一筆書き風のイラストで、フランス地図の上に各地のチーズが描かれています。白地にブルー。シンプル・イズ・ザ・ベストですね。
さてと、この先へ行くと……

ん?見覚えのあるパッケージ。
これはパリ左岸の高級デパート、ボン・マルシェの食品館「ラ・グランド・エピスリー・ドゥ・パリ」で販売しているフィナンシエではありませんか!
「味見はいかがですか?」
とすすめてくださるこの方がその製造者。今日は特別に、アトリエのあるブルターニュ方面からいらしたのだそうです。
La Moinerieラ・モワヌリーのフィナンシエ8種類と、メレンゲが5種類、ブルターニュの旗の上に並んでいます。新製品のメレンゲは1年前から製造しているそうで、「ラ・グランド・エピスリー・ドゥ・パリ」には、1ヶ月前から登場しているとのこと。フランボワーズ味を試食させていただくと……口の中ですーっと溶けてゆきます。

「僕らの地方には、すばらしいフランボワーズのシロップを作る職人がいて、そのシロップを使っているんです。ラ・モワヌリーはどのお菓子にも、着色料や保存料を一切使いません。メレンゲはオーガニックの認証を取得する予定です」

いつもはアトリエで作業をしている製造者が、こうして実際に売り場に立ち、お客さんとコミュニケーションをとっている。作る側にとっても、買う側にとっても、意義深いことに思えます。

さてその向かいは、うまい具合に紅茶とコーヒーのスタンド。コーヒー豆を挽く、いい香が漂っています。

店先に出したテーブルでは、マダムたちが休憩中。マルシェのあるところなら、どこでも必ず見る光景です。買い物ついでに友人に会うと、こうしてちょっと語らいあうのがフランスのライフスタイル、つまり伝統なのですね。マルシェの役割は、単なる買い物の場にとどまらないといえます。


1990年後半から、パリ市はマルシェの数を増やす政策を実施してきました。その結果、1860年に51箇所だったマルシェが、現在では95箇所(鳥市や花市なども含む)を数えています。都会に人間らしい活気と、コミュニケーションを取り戻す最良の手段として、マルシェに目をつけたに違いありません。
パリ市のサイトでは、全20区のマルシェ情報が掲載されています。右上ENをクリックすると英語版になります。
こちらは写真が豊富。パリの地図をクリックして、次にお目当ての区をクリックしてください。

そうそう、マルシェといえば犬です。ご主人の足元でお行儀良くしている、大型犬に小型犬、みんな、マルシェに活気を添える名脇役たちです。
一緒に写っている手書きの看板も、いい感じだと思いませんか?生産者直売の手作りフォアグラのスタンドです。
このお隣は、やはり生産者直売の牡蠣のスタンドで、看板に「Producteur(生産者)」と書いてありました。

この「Producteur」の看板が、直売スタンドの見分けかたなので、覚えておくと役に立つかも知れません。
もっとも実際に見てみれば、一目瞭然ともいえます。シェーヴルチーズを5種類だけとか、牡蠣を5種類だけ、瓶詰めのフォアグラだけ、といった専門的で小規模なスタンドは、見るからに生産者直売です。

花も、マルシェらしいイメージがありますよね。キャスター付きのキャリーバックに花を挿し、家路に急ぐマダムたちをよくマルシェ周辺で見かけます。
「花を買うのは、お金のゆとりではなくて心のゆとり」と、以前確か吉本ばななの小説の中で読みました。フィリージアなら、一束4ユーロ程度。本当に、心のゆとり次第です。

最後に立ち寄る1軒は、ここ、魚のスタンドです。ノルマンディーから毎週1回、ル・ヴェジネにやってくる魚屋さん。いつ見ても、サバはそのまま刺身でいただきたい新鮮さです。魚を陳列するレイアウトも、日本とはだいぶ趣が違いますよね。

1本釣りの天然ものの鯛と、同じく天然もののスズキを購入。内臓とウロコをとってもらいます。スズキのグリルはウロコつきのほうがおいしい、と聞いたことがあるので、スズキは内臓だけきれいにしてもらって……

これにぎらぎらと光る立派ないわしを5つつけて、しめて23,3ユーロです。

牡蠣と帆立貝も、ほら、こんなに新鮮!日本人にはたまりませんよね。

こういういい食材は、さっと生で、上等な白ワインとあわせていただくのが一番!!(個人的に今はシャブリの気分です)
フランス料理で魚、というと、すぐに舌平目を思い出すのですが、フランスに来てからまだ一度も買ったことがありません。いつも、丸ごとグリルできる尾頭付きばかりです。

オマールやアンコウは、年に1、2回ですが、奮発して購入することがあります。

日本と違って、スーパーで簡単に切り身の魚を買えるような環境はないものの、魚の種類と鮮度という点では、フランスはかなりのレベルにあると思われます。
横着に丸ごとグリルばかりでなく(もちろん、最高においしいですが)、シメサバやイカサシなどを作らないと、もったいない気がしてきました。

以上で、マルシェめぐり終了です。小さなバカンス気分を、楽しんでいただけましたか?

つい時間がたつのを忘れ、すでにもうお昼になってしまっていたら、焼きたてのピザを買って帰るのもいいでしょう。石のかまどを搭載した(!)トラックが、エクサンプロヴァンスのマルシェよろしく出店していることがあり、結構な人気者なのです。
今日のランチはこのピザと、ロゼワインできまりかな。
フランスを旅行されたら、そして滞在する街でマルシェに出会ったら、今度はご自身で実際に、スタンドの間を散策してみてください。

思いがけないお土産が見つかるかもしれません。
それに、その土地の住人になった気分を、ほんの少し、味わえるはずです。
人々の会話する声を聞き、活気を肌で感じるとき、ガイドブックにはない自分だけのフランスが、そこに見えてくることでしょう。

ル・ヴェジネ市のサイト
http://www.levesinet.fr/

ラ・モワヌリー
La Moinerie
http://www.les-financiers.fr/
フィナンシエ(400g 20~25個入り)8,80ユーロ~10ユーロ
トラディション、シトロン、オレンジ、チョコチップ、オレンジウォーター、ラムレーズン、バニラ、プラリネ、ピスタチオの10種類

春のマルシェ散策-前編

みずみずしいラディッシュ!
キッチンに春がみなぎるようです。先ほど、近所のマルシェ=朝市で買って来ました。
毎週2回、火曜日と土曜日に立つマルシェの日が、私の野菜調達日。生産者直売のスタンドに並ぶ野菜は、これ以上の贅沢はない!と実感するおいしさです。

春の訪れとともに野菜たちの顔ぶれが変わり、マルシェ全体の活気も勢いを増したという感じ。実際、暖かくなると、とたんに並ぶスタンドの数が増えるのです。
そんな春のマルシェは、ぶらりぶらりと歩いているだけで、ちょっとした非日常気分を味わえます。
せっかくですから皆さんもご一緒に、「春のマルシェ散策」に繰り出しましょう!

ここはパリの西側にある、ル・ヴェジネという郊外の街。高速地下鉄RERのA線に乗って、凱旋門から約20分のところにあります。
教会の広場に並ぶスタンドは、大小ざっと50件。ルヴェジネ市役所に問い合わせたところ、スタンドの数は冬の間は約40軒、夏になると約60軒に増えるとのことでした。
大胆に商品を広げたタピスリー屋さんを先頭に、洋服屋さん、そして……

アンティークドールとヴァイオリン、いつもは見かけないスタンドです。看板には「古いおもちゃ高価買い取り」とあります。ル・ヴェジネは高級住宅街なので、買い取り目的の出店でしょうか。
すぐお隣には、アンティークのメダルや時計、古銭を扱うスタンドが出ています。
一般的にマルシェはその規模に関係なく、食料品のスタンド以外にも下着屋さん、靴屋さん、化粧品屋さんといったスタンドがならぶもの。なので中にはこのアンティークドールのスタンドのように、誰が利用するのだろう?と思うような店もあるのです。

ご覧ください、ここが私のひいきの八百屋さん、ヴァレリーさんのスタンドです。野菜スタンドは他に何軒もありますが、一番行列の長い人気店はここ。珍しい古典野菜つくりにも力を入れている、個性的な農家です。

赤いラディッシュの右隣にあるのは、黒ラディッシュと根セロリ。左隣はアンディーヴです。日本ではチコリと呼ばれているようですね。
黒ラディッシュ、根セロリ、アンディーヴは、冬野菜の代表格です。
「春の野菜ならタンポポの葉が出ているし、もうすこししたらフェンネル(ウイキョウ)も並ぶわよ。でもまだちょっと寒いわね」

と、ヴァレリーさん。
このところ新鮮なハーブやサラダ菜の種類がぐっと増え、店先がにぎやかになったとはいえ、野菜スタンドが春一色になるのは、まだもう少し先のようです。
他の八百屋さんには、ホワイトアスパラガスも、フランボワーズも並んでいます。でも、それらはすべて輸入品。
マルシェの醍醐味は地産地消にあるので、わざわざここで買わなくても……と、つい思ってしまいます。

ヴァレリーさんのスタンドの前に、食器屋さんが店開きをしています。サラダボウルにオーブン皿、陶器、磁器、サイズも用途も様々な食器が並んでいます。

穴の開いたこのボウルは、なんとイチゴ用。これからの季節に、ちょうど欲しくなりますね。
「ブドウを入れてもいいし、さくらんぼを入れても」と、スタンドのご主人。水きり用の受け皿付きもあります。

この小さなカフェオレボウル、お茶碗にどうかしら?と、日本の甥を思い出しつつパチリ。
ワンポイントのモチーフは、船のロープや花輪など、色違いで数種類あります。1つ3ユーロとは、お値段もやさしいですね。

とぐろを巻いた黒い物体。これ、何かわかりますか?
豚の血の腸詰、ブダンです。見ただけでも十分たじろいでしまうのに、正体を知ってもういっぺん仰天させられます。
でもこのげてもの(失礼)が、夢のようにおいしいのです。じゃがいもかりんごで作ったピューレを付け合せにするのが一般的な食べかたで、その味覚の織り成すハーモニーと言ったら!

「フランスは本当に、豚肉文化の国だなあ」と、ただただ感心するはずです。豚の血が、美味な食べ物に変身しているのですから。
豚肉の加工品は、パテ、テリーヌ、ソーセージといった日本でも一般的なものから、アンドゥイエットという腸の腸詰や、グラトン・リヨネという脂身の揚げ物など、そのバラエティーを挙げだせばきりがありません。脂肪はラードになりますし、まったく、豚のすべてを余すことなく味わいつくしています。恐るべき情熱ですよね。

こちらのスタンドは、サラミやソーセージをずらりと吊るしています。
一口にソーセージと言っても、ご覧の通りの種類の豊富さ。そのひとつひとつが、違った味で、違ったおいしさですから、ワインとあわせていくらでも食べられます……と、地上の楽園をむやみに楽しんだ結果、私のコレステロール値は上昇し、現在はベジタリアン状態です。
なので普段の買い物は、ヴァレリーさんの店と、このパン屋さんで用が足ります。

種類の違いは、小麦粉の違い、酵母の違い、発酵時間の違いなど、いろいろ。雑穀入りやオリーブ入りなど、アレンジしたパンもありますね。
手前にある、1メートルほどの巨大なパンは、必要な分だけ切ってもらって購入します。いつも不思議に思うのですが、大きく焼いた昔ながらのパンは、日がたってもおいしさが長持ちするのはなぜでしょう。
レジをはさんだ向こう側には、パン・オ・ショコラやマドレーヌ、ケーキなどが並ぶので、そちらも非常に楽しげです。

前半は、ここまでです。
後編を待つ間、よろしければ、ソシエテ・ボンヌのパリ⇔東京往復書簡ブログをご覧ください。ル・ヴェジネのマルシェの様子を、タンポポの葉などの写真と一緒にお伝えしています。
http://societebon.exblog.jp

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